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林班の違いによる昆虫相調査(オオムラサキの天敵調査を含む)

歩行性甲虫調査の結果と考察 

オオムラサキ定着の可能性検証のために学校林内の特徴的な植物群落7地点 Station(St.1 ~ St.7)を選定し歩行性昆虫調査を行った。

2006年

暗いトドマツ林 (St.1)
雑木林 (St.2)
エゾエノキ植林予定地(地拵え済)(St.3)
ススキ、チシマザサ、クマイザサ草地 (St.4)

2007年

湿地(St.5)
明るいトドマツ林(St.6)
雑草地(St.7)

ピットホールトラッ プにより2週間ごとに設置と回収を行い 12,8824頭の個体を採集し 9 科 43 種を同定した。
同定に当たっては、北海道開拓記念館(現北海道博 物館)学芸員の堀繁久氏、野生生物総合研究所の安細元啓氏の協力を得た。
昆虫類の同定、特にゴミムシ類の同定は難しかったが、調査の結果、鱗翅目幼虫の天敵であるヨツボシモンヒラタシデムシなどが時期的には多く生息していることがわかった。 また、採集した昆虫の中には北海道での採集例が2例目となるミカゲゴモクムシも含まれており、北海道に定着していることを裏付ける貴重な発見ができた。
【2007 jezoensis No.33 ミカゲゴモク ムシの記録 堀 繁久】

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2007年には、酪農学園大学酪農学部酪農学科で「小・中・高校教員との共同研究」の募集があることを知り、2007年から3年間「生物学研究室(佐藤元昭教授) と札幌南高等学校との共同研究」を開始した。 共同研究テーマは、主題「札幌南高等学校林における昆虫相の検討」2007 年度の副題は「ゴミムシ類の同定とオオムラサキ生息の地理的・歴史的可能性を探る」、2008 年度、2009 年度の副題は「道央圏に生息するオオムラサキの地理的・歴史的分布変化の検討」である。 

【学校林における歩行性甲虫調査の結果】

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【甲虫調査体験感想文】 

学校林の思い出

 札幌南高校卒業生57期  齊藤 真里恵

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「学校林調査隊募集」この一言がオオムラサキの雄を背景に貼られていたことから私にとって学校林は特別になった。
平成16年の夏、1学年の時に学校林についての授業が行われた。学校林の歴史や生息している生き物についての座学のあと、下草刈や枝打ち、除伐など実際に学校林へ行って作業をした。もともと生き物が好きだったし、森林管理とは何かという話も面白かったがそのときは学校林に対してはそれだけの感想しか持たなかった。そしてそのまま進級し、3学年になったある日、箱﨑陽一教諭の貼られたポスタートラップに捕まったのである。

学校林調査隊とは学校林に生息する生物の調査をする有志の活動部隊である。学校林を環境保全教育のためにもっと活用できないかと考えられた科学部顧問の箱﨑教諭、佐藤公教諭、科学部の学生を中心に組織された。植林されてきた針葉樹を中心とする森林では林内は暗いため下草が生えず、生息できる生き物の種類は少ない。しかし、在来の広葉樹が主となれば林内は明るくなり下草も生えることができる。また次世代の広葉樹も光量が足るため発芽でき、多様な生き物が生存できる森林となる。学校林は新たに生物多様性を学ぶという役割を持つことになる。学校林周辺には国蝶オオムラサキの生息場所がある。オオムラサキは環境省のレッドデータブックでは準絶滅危惧種に指定されている。雑木林に生息する昆虫のシンボルとして有名であるが、個体数は減っているようである。将来生息できる環境が整えば、新たに生まれ変わった学校林の目玉として放蝶が可能になるかもしれない。そのための基礎調査を行った。

学校林の調査は昆虫を中心に行った。植林地や広葉樹林地の樹種によって採集できる昆虫の種類や量が異なるのかどうかを解析した。手法はピットホールトラップという方法で行った。プラスチック製のコップに保存液として酢酸を入れたものを地面に埋め、そこへ落ちた昆虫を定期的に回集した。回収してきたサンプルは放課後に科学部のみんなと協力して種族ごとに分ける分類作業をし、統計を取った。

トラップを仕掛けるのも、分類をするのも始めての経験だった。場所や季節によって採れる種類や量があまりに違うこと、こんなにたくさんの種類がオサムシ科にいたこと、トラップにかかるオサムシの中には黒くて1㎝ほどのよく似た種類がとても多いことなどすべてが夢中になった。回収してきたサンプルは酸っぱくなったぬか床のような独特の香りを放ち、それが理科実験室に充満していた。
このような経験が札幌南高校在学中にできたことは大変幸運だった。もしもあのときの学校林調査隊募集がなかったら、ただの生き物好きで終わってしまっていただろう。大学で環境や生き物、特に昆虫について学ぶことはなかったし、環境についての仕事に就くことも、そんな選択肢を持つこともなかったと思う。学校林は在学中、現在、そして将来にわたり私に影響を与えている。

「学校林にはばたけ国蝶オオムラサキ」
 

 

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