森のいきもの 森のいきもの

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 札幌南高校の学校林は 122.05ha の面積を有する森林ですが、その約80%はカラマツや トドマツが植林された人工の針葉樹林です。 そこには背の高い針葉樹ばかりが立ち並び、 太陽の光が地面まで届きづらく、広葉樹はあまり見られません。 人の手によって人工的 に作られた不自然な森です。

 人工の針葉樹林は、動物や昆虫など森の生き物たちには棲みづらい森です。 動物たち の食料となるどんぐりや木の実が無く、地中生物をはぐくむ落ち葉も積もりません。 そ こでは、生態系は不安定な状態です。

 北海道の森の本来の姿は、針葉樹と広葉樹が交じり合った「針広混交林」です。 亜寒 帯性の針葉樹であるトドマツ、エゾマツ、アカエゾマツと、温帯性広葉樹であるミズナラ、 イタヤカエデ、ハルニレ、カンバなどが共生することで、森は変化に富み、種の多様性が さまざまな生命を育み、豊かな自然を作ります。 秋に針葉樹の緑と広葉樹の赤や黄が入 り交じる美しい森、そこでは、生態系は安定した状態に達していることでしょう。

 今はまだ決して豊かな森とはいえない札幌南高校学校林ですが、種の保全や生物多様性 を促進する活動を地道に重ねることによって、生態系を回復する森のお手伝いをしようと 考えています。 生物多様性への歩みは生態系回復への歩みであり、生態系の回復がクラ イマックスに達した時、学校林は限りなく北海道本来の森、すなわち天然林に近づいたと いえるでしょう。

 私たちは、森に棲む生きものの視点から「100 年プロジェクト~100 年後の天然林」を目 標に、経営林としてだけではない、環境林、教育林としての学校林の活用を目指します。

 

オオムラサキプロジェクト

オオムラサキプロジェクトとは?

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 日本の国花(キクとサクラ)や国鳥(キジ)があるように、国蝶があるのをご存知ですか? 日本の国蝶は「オオムラサキ」です。 1957年(昭和32年)に日本昆虫学会がオオムラサキを国蝶に選定しました。 
オオムラサキは日本で最初に発見され、属名をSasakia(ササキア)といいます。 日本昆虫学の創始者ともいえる昆虫学者、佐々木忠次郎(ササキチュウジロウ)博士の名にちなんで名付けられました。 
環境省では、自然環境を測定する目安になる指標昆虫の一つにオオムラサキを選んでいます。 しかし残念なことにオオムラサキは準絶滅危惧種に指定され、今ではなかなかその姿を見ることができません。 札幌市内でも円山公園、藻岩山、八剣山の3か所で生息が確認されるだけになってしまいました。
オオムラサキ減少の原因の一つに、開発や宅地造成などによる森の消失が挙げられます。 オオムラサキは森に棲む蝶で、幼虫はエゾエノキの葉だけを食べます。 成虫は、花の蜜ではなく、樹液をエサにします。 そして水を飲むために毎日川などの水場まで飛行します。 エゾエノキの葉と樹液と水、この3つの条件が揃った場所でないとオオムラサキは生息できません。 エゾエノキは北海道レッドデータブックで希少種(準絶滅危惧種に相当)に指定されています。
オオムラサキと生態のよく似たゴマダラチョウは、札幌市内では20年以上前から目撃情報が途絶えてしまいました。 オオムラサキが同じ運命をたどらないように、生息が確認できている今のうちに守る必要があると考えます。

 2017年、私たちはオオムラサキとエゾエノキを守るための活動を始めました。 オオムラサキの幼虫を保護し成虫になるまで育成、そして繁殖期には自然に返すというサイクルを目指して、生息環境を整える活動を実施中です。 エゾエノキは、「はばたけ! 国蝶オオムラサキ」プロジェクトで卒業生たちが植林した幼木を、手入れしながら大切に育てています。
 まだ始まったばかりのオオムラサキプロジェクトです。 これから様々な困難が待ち構えていることと思いますが、応援よろしくお願いいたします。

オオムラサキの飼育 エゾエノキの育樹
 

きのこプロジェクト

きのこプロジェクトとは?

IMG_2586.jpg 森には草木が育ち、草食動物がいて、肉食動物がいます。 それらの生きものたちが生命を終えると、その枯れ木や死体を土壌生物や微生物が分解して土に返します。 そうして栄養を含んで豊かになった土壌は、新たな草木を繁らせます。 生命が循環し、生態系が安定した状態です。
学校林は総面積の約80%が人工の針葉樹林で、自然のバランスが損なわれた不自然な森です。 生態系は安定した状態に到達していません。 食物連鎖の頂点に位置するヒグマや猛禽類の生息は確認されていないのが事実です。
2006年に実施された歩行性甲虫調査では、昆虫の世界でも同じような状態が確認されました。 学校林調査隊によって12,800頭余りの個体が採集され、9科43種の甲虫が同定されました。 この数字は、学校林の甲虫目が単層的で、決して多様性に富んでいるとはいえないことを示しています。 

 きのこプロジェクトは、きのこの原木栽培をすることで甲虫の産卵床となる倒木や切り株を人工的に作り出す試みです。 きのこのホダギは、ホダギとしての寿命を終えると甲虫目の産卵床に役割を変えるのです。 甲虫目(クワガタ、カミキリムシ、コガネムシ、ホタル、テントウムシなど)は、実に37万もの種を包含する、昆虫界だけでなく動物界で最大の目です。 ホダギの活用で甲虫目が増え、その種類が多様になれば、食物連鎖でその上位に位置する生きものも多様性を増し、生態系の安定した豊かな森が実現することでしょう。 

 きのこプロジェクトは「はばたけ! 国蝶オオムラサキ」プロジェクトの一環として2011年に始まった後、一時期中断していましたが、2017年に学校林財団の有志によって再開されました。 美味しいきのこを堪能した後に、どれだけの昆虫たちと遭遇できるか楽しみです。

学校林のきのこ図鑑

 

最近の活動日誌

越冬幼虫観察

2月25日(日)晴  3.1℃  9:00~12:30 参加者:名人・松本・刀根・宮本     名人をお迎えに行っている間に私と刀根さんで越冬幼虫を雪の中から掘り出すことにしました。 ことしはいつまでも寒く、雪も多くお彼岸のお墓の雪堀りのようで、かなり掘っても幼虫のハウスが出てこない。 やっと掘ってハウスの周りの雪を除け終えたころに、美奈子さんと名人...

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名人との懇談会・来年度の不足な用具・肥料・ネット等の買物

2月22日(木)晴 -1℃  13:00~16:30 参加者:名人・ 松本・斎藤・高原・宮本 来年度始まるにあたって、名人にいろいろ教えていただくために、お忙しい中お時間をいただいて懇談会を開きました。 はっきり言って講習会です。  斎藤さんがビデオに撮りあとは聞き役、聞き取り役と役割分担し、3時間強質問攻めで、名人がコーヒーを飲む間もない。 「あの…&hell...

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キノコのホダ木つくり

12月14日(木)晴  3.1℃  9:00~12:30  参加者 :松本・陣内・樋口・宮本   積雪の量が心配でしたが長靴でOKということに。 いくらなんでも美奈子さんの車じゃ大変と思っていたのが、入り口から陣内さんのトラックに乗ることに。 嬉しい。何十年ぶりだろう。でも乗る時からどうやって登っていいか解らない。見よう見まねでよじ登ったけれどあしが短くて引っかからない。 手...

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『はばたけ! 国蝶オオムラサキ』プロジェクト

国蝶オオムラサキ

 

「はばたけ!国蝶オオムラサキプロジェクト」とは、箱崎陽一(はこざきよういち)学校林財団理事(前・北海道札幌南高等学校教諭)が在職中に、「札幌南高校学校林にはばたけ! 国蝶オオムラサキ」をスローガンに立上げた学校林活動です。この活動の詳細はこちらのバナーからご覧ください。

 

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